トランスの損失は、大きく鉄損(無負荷損)と銅損(負荷損)の2つに分けられます。効率や発熱、電圧変動率まで、性能に関わる多くの項目がこの2つの損失に起因します。本記事では、それぞれの発生メカニズムと、設計上のバランスの取り方を解説します。
鉄損と銅損とは|無負荷損と負荷損の全体像
鉄損(無負荷損)は、一次側に電圧をかけただけで、負荷を接続していなくても発生する損失です。コア(鉄心)内部の磁束変化によって生じます。一方銅損(負荷損)は、負荷電流が巻線を流れることで生じるジュール熱による損失で、無負荷時にはほぼゼロです。
項目 | 鉄損(無負荷損) | 銅損(負荷損) |
|---|---|---|
発生場所 | コア(鉄心) | 巻線 |
負荷依存性 | ほぼ一定(負荷に依存しない) | 負荷電流の2乗に比例 |
主な内訳 | ヒステリシス損+渦電流損 | 巻線抵抗によるジュール熱 |
鉄損(無負荷損)の内訳
鉄損はさらに2つの成分に分かれます。ヒステリシス損は、コア材料内部の磁区が磁束の向きに合わせて反転を繰り返す際のエネルギー損失で、周波数にほぼ比例します。渦電流損は、コア内に生じる誘導電流(渦電流)によるジュール熱で、周波数の2乗、コア積層板厚の2乗に比例して増えます。低鉄損材料の採用や積層板の薄型化で低減できます。
銅損(負荷損)とジュール熱
銅損は、電流が巻線の抵抗を流れることで発生する熱損失(I²R損失)です。負荷電流が2倍になれば銅損は4倍に増えるため、定格付近での運転条件が設計の目安になります。巻線の導体断面積を太くする、巻数と電流のバランスを最適化することで低減できますが、太くしすぎるとトランスが大型化するというトレードオフがあります。
鉄損・銅損のバランス設計
鉄損を減らそうとコアを大きくすると、巻線が長くなって銅損が増えることがあり、逆に銅損を減らそうと導体を太くするとコアまわりが窮屈になり鉄損側の設計自由度が下がることもあります。運転パターン(常時通電か、断続的な高負荷か)に応じて、鉄損と銅損のどちらを優先するかを判断し、コア材・巻線構造をトータルで設計することが効率と信頼性の両立につながります。
まとめ
- 鉄損(無負荷損)はコアで発生し、ヒステリシス損+渦電流損の合計。負荷にほぼ依存しない。
- 銅損(負荷損)は巻線で発生し、負荷電流の2乗に比例して増える。
- 両者はトレードオフの関係にあり、運転パターンに応じたバランス設計が効率・信頼性を左右する。






