高周波トランスやリアクトルでは、「直流抵抗はわずかなのに、動かすと巻線が想定以上に発熱する」ことがあります。その主犯が表皮効果と近接効果です。本記事では、高周波トランス・リアクトルを設計・製造する北川電機(KEC)が、この2つの効果と巻線損の仕組み、そしてリッツ線などの対策をメーカー視点で解説します。
表皮効果とは ── 電流が導体表面に集中する
表皮効果(skin effect)とは、交流の周波数が高いほど電流が導体の表面付近に集中し、中心部にはほとんど流れなくなる現象です。導体内部を流れる電流が作る磁界が、内部ほど電流を打ち消す向きの渦電流を誘導するために起こります。
電流が表面に偏ると、実際に電流が通る断面積が減るため、交流抵抗(AC抵抗)が直流抵抗より大きくなります。電流が集中する深さの目安を表皮深さと呼び、周波数が高いほど、また導電率・透磁率が高いほど浅くなります。銅では商用周波(50/60Hz)で約9mmですが、数十kHzでは数百μmまで浅くなり、太い導体でも表面しか使えなくなります。
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近接効果とは ── 隣の導体が電流分布をゆがめる
近接効果(proximity effect)とは、隣り合う導体や外部磁界の影響を受けて、導体内の電流分布がさらに偏る現象です。コイルのように導体が何層も密に巻かれていると、各導体は隣の導体が作る磁界にさらされ、その磁界を打ち消す向きに渦電流が流れて、電流が導体の片側に押しやられます。
近接効果は巻線が多層・密集するほど強く、表皮効果以上に交流抵抗を増やすことも珍しくありません。ギャップ付きリアクトルでは、ギャップからふくらむ磁束(フリンジング)が近傍の巻線を横切り、この効果を助長します。
高周波での巻線損(銅損の増加)
表皮効果と近接効果は、いずれも導体内の渦電流によって生じる損失であり、高周波での巻線損(交流銅損)として発熱に直結します。周波数が高くなるほど交流抵抗は増え、直流抵抗の数倍に達することもあります。スイッチング電源やDABコンバータのように数十kHz〜数百kHzで動く高周波トランスでは、この巻線損の見積もりと低減が効率・温度上昇を左右します。
対策 ── リッツ線・導体形状・巻線配置
交流抵抗を下げる基本は「表面積を稼ぎ、渦電流を分断する」ことです。
- リッツ線 … 細い素線を多数、絶縁して撚り合わせた線。各素線が細く表皮深さより小さいので表皮効果を抑え、撚りによって近接効果も平準化する。高周波巻線の定番。
- 導体の細径化・平角化・箔巻き … 磁界に対して導体を薄く配置し、渦電流の経路を小さくする。
- 巻線配置の最適化 … 層数・巻き方・一次二次の配置を工夫し、近接効果とフリンジングの影響を減らす。
これらは「太い線を使えば低抵抗」という直流の常識が通じない、高周波設計ならではの勘所です。
北川電機の高周波巻線設計
北川電機は高周波トランス・リアクトルを得意とし、動作周波数に応じてリッツ線や導体形状、巻線配置を作り込みます。交流抵抗・温度上昇を自社で実測しながら、巻線損を抑えた高効率・低温度上昇の設計に落とし込めることが、高周波を扱うメーカーとしての強みです。
まとめ
- 表皮効果は、高周波で電流が導体表面に集中し交流抵抗が増える現象。
- 近接効果は、隣接導体や磁界で電流分布がさらに偏り交流抵抗が増える現象。多層・密巻きで顕著。
- どちらも渦電流による高周波の巻線損(銅損増加)で、発熱・効率低下を招く。
- 対策はリッツ線・導体形状・巻線配置の最適化。高周波トランス・リアクトル設計の要点。







