トランスの性能・サイズ・効率・騒音は、その多くが鉄心(コア)で決まります。同じ巻数でもコアが違えば別物の特性になります。本記事では、コア選定から自社評価まで手がける北川電機(KEC)が、トランスの鉄心の役割と、コア形状・コア材の種類と選び方を解説します。

鉄心(コア)の役割

鉄心(コア)とは、巻線に流れる電流が作る磁束の通り道になる磁性体です。空気に比べてはるかに磁束を通しやすい(透磁率が高い)ため、コアがあることで磁束を効率よく閉じ込め、少ない巻数・小さなサイズで大きなインダクタンスや電力伝送を実現できます。裏を返せば、コアで生じる損失(鉄損)や騒音(磁歪によるうなり)、飽和といった課題もコアが握っています。

コア形状の種類

コアは形状によって特性と使いどころが変わります。

コア形状

特徴

主な用途

EI/EEコア

積層鋼板。安価で量産向き。汎用性が高い

商用周波トランス全般

カットコア

巻鉄心を切断。磁気特性が良く小型

高性能トランス・リアクトル

トロイダル(Rコア)

ドーナツ状で磁路が連続。低漏れ磁束・低騒音

低ノイズ電源・オーディオ

フェライトコア

高周波で低損失。形状自由度が高い

スイッチング電源・高周波トランス

関連記事トランスの種類とは?用途・コア形状・相数でわかる分類をメーカーが解説

コア材の種類と飽和磁束密度

コアの「材料」は、飽和磁束密度Bs(どこまで磁束を蓄えられるか)と鉄損(どれだけ発熱するか)の特性で選びます。

コア材

飽和磁束密度 Bs(目安)

特徴

方向性ケイ素鋼板

約1.9〜2.0 T

Bsが高く安価。高周波では鉄損大

アモルファス

約1.5〜1.6 T

低鉄損で高効率。薄帯で加工に配慮

ナノ結晶

約1.2〜1.3 T

高透磁率・低損失。高周波に強い

フェライト

約0.4〜0.5 T

高周波で低損失だがBsが低い

関連記事渦電流損とは?発生の仕組みと低減方法をメーカーが解説

鉄損とコア材選定

コアで生じる損失(鉄損)は、B-H曲線のループ面積に由来するヒステリシス損と、コア内の渦電流による渦電流損の合計です。周波数が高いほど渦電流損が増えるため、高周波ではフェライトやナノ結晶のような低損失材が有利になります。一方、商用周波で大きな磁束を扱うならBsの高いケイ素鋼板が経済的です。「使う周波数」と「必要な磁束・出力」を軸に、損失・サイズ・コスト・騒音のバランスでコア材と形状を決めます。

関連記事ヒステリシス損とは?B-H曲線との関係と低減策をメーカーが解説

北川電機のコア選定・設計

北川電機では、用途の周波数・出力・効率・静音要求に応じて、コア形状とコア材を一点ずつ選定します。飽和余裕・温度上昇・損失を自社の評価設備で確認しながら、最適なコアを組み込んだカスタムトランス・リアクトルを設計・製造できることが、メーカーとしての強みです。

まとめ

  • 鉄心(コア)は磁束の通り道であり、トランスの性能・サイズ・損失・騒音を左右する中核部品。
  • コア形状はEI/カットコア/トロイダル/フェライトなどがあり、用途と周波数で使い分ける。
  • コア材はケイ素鋼板・アモルファス・ナノ結晶・フェライトが代表で、Bsと鉄損のバランスで選ぶ。
  • 「使う周波数」と「必要な磁束・出力」を軸に、損失・サイズ・コスト・騒音で最適化する。